二人三脚。
我が家の自閉くんは、
お母さんが大好きです。
もう9才だけど、魔の2歳児のようにお母さんを追いかけます。
もちろんお風呂も寝るときも、トイレ以外はほとんど一緒。
小さいときはそれで良かったのです。
それは障害の有無に限らず、お母さんが好きで、お母さんといつも一緒にいたいことは、子供として当たり前にある感情ですから。
しかし彼ももう9才。
小学4年生になります。
まだまだ華奢ではあるけど、ここ何年間で身長はぐんと伸び、靴も22センチ。
だっこをせがまれてももう重くて3秒が限界。
そこで、おかーちゃん、
よし。
と、決意。
まずお風呂を一人で入れるようにしよう!
発達障害の子供は、1つの物事を成せるようになるまで時間がかかります。
療育施設に通っていたときから、我々は『子育て』ではなく、『訓練』をしている。
そういう意識で接してきました。
靴下をはくのも、リュックサックを背負うのも、ボタンを掛けるのも、すぐには出来ません。
体の動かしかた、指先の使い方、全て教えてあげなくては、自分の力だけでは自分の体を使えないのです。
これは障害のある子供と、健常の子供、両方と接してきて心底思い知ったことです。
4才の妹が9才の兄のボタンを掛けてあげる。
一見微笑ましい光景ですが、母親の私にとっては残酷な瞬間でもありました。
一人で出来ることを1つずつ、少しずつ増やさなくては!
そんなわけで、お風呂の自立にとっかかったわけです。
お風呂は男女を分ける場です。
『男子』の息子はすぐ先の未来、『男性』になります。
「男の人と女の人は、別々にお風呂に入らなくてはいけないんだよ。」
未来につなげるためにも、そこから教えることにしました。
彼にとってお風呂タイムは幼少期から変わらず水遊びとイコールです。
私が声をかけるまでは、湯船でずーーーっと遊んでいます。
私も自分のことをまず終わらせてから子供のことをする癖がついていましたので、私はまずそこを改めて、『お母さんも洗うから貴方も洗いなさい』としました。
しかし最初からはもちろんできない。
する『気』もない。
私はなるべく優しく、怒らないように気をつけて、一から教えました。
まずはお風呂の概念から。
「お風呂で遊ぶことは何にも悪いことじゃないよ。
でも、お風呂は髪の毛や体をきれいにするために入るんだから、とにかく先にきれいに洗おう。」
これを毎日繰り返し教え続ける。
でもなかなか自分から洗う気持ちにならない。
でもしつこく教え続ける。
髪の洗いかたや体の洗いかたも同時に教える。
顔にお湯がかかるのを怖がるので(特に目に入るのを恐れる)、まずそこを慣らさなくてはなりません。
目をしっかりつぶっていれば目にお湯は入らないことを繰り返し伝える。
繰り返し繰り返し。
すべての行程を繰り返し繰り返し教える。
発達障害児に1つの物事を達成させるために最重要なことは、教える側の『根気』です。
私は元来気が長い方ではないので、これが最大の課題。
正直言って何度も同じことを言い続けるのは疲れるし、うんざりするし、もういいや!って何度もなります。
だって私がやっちゃった方が早いんだもん。
『待つ』ことは、こちらもそれなりに万全でなければ苦行です。試練です。
体調悪いときなんて本当に倒れそうになります(笑)
でもお互いの未来のために頑張るしかない。
人より何倍も頑張らないと、達成できない。
それは障害を持って産まれた彼の、障害を持った彼を産んだ私の、一生涯の課題。
たかだかお風呂に入るという、健常の人間からしたら全くたいしたことのない当たり前の日常も、彼にとってはつらい修行なのです。
しばらく言い続けているうちに、あることに気づきました。
「…あ、私、
なんやかんやで結局手伝ってしまっている。」
背中の届かないところ、洗髪のお湯かけ、石鹸のついたスポンジの片付けetc…
結局私が要所要所で手を出してしまっていました。
で、彼は当たり前のように『そうしてくれる』と思っている。
これはいかん。
で、おとといスパッとやめました。
手を出すのを。
できなきゃできないでもういいし、苦手な部分は自分で考えてなんとかせい。
と。
…これがね、けっこう辛抱がいりまして(;´∀`)
私ちょいと神経質で潔癖なとこがあるので、体や髪の毛はちゃんと洗いたいんですよね。
それを全て息子に任せるってーのが、それ自体がもう苦行でですね(笑)
耳の後ろや足の裏ちゃんと洗ったのかなとか、髪の毛は流し残しがぬるぬるしてないかなとか、考え始めたらきりがない(-""-;)
別にちょっとくらい泡が残ってようが洗い忘れてようが、だからなんだ、死ぬわけじゃなし!と自分に言い聞かせて、口は出しても手は出さないと決めたわけです。
そんなこんなで昨夜、やはりのんべんだらりと湯船で遊んで自分のこと何もしようとしない息子を残して、私と娘はさっさと洗ってさっさと先に出ました。
当然「行かないでおかあさーん!」と叫ぶ。
心を鬼にして無視。
後を追って飛び出る息子。
殺し屋のような眼差しを向ける母。
息子、ようやく母の本気を悟る。
「あ、そうだ!洗わなくちゃ!」
その演技じみた言葉に一瞬笑いそうになりましたが、息子はさっと風呂場に戻り、20分ほどかけて自分で髪を洗い、体を洗い、10秒湯船に浸かって出てきました。
その10秒数える声が風呂場から聞こえてきたとき、何とも言えず感動してうるっときた私であります。
風呂場はおもちゃが散乱し、風呂のふたは閉めてこないし、湯船は何故か泡だらけ。
彼が悪戦苦闘した様子がうかがえます。
今夜のところはこれでよし。
明日は風呂のふたを閉めることと、窓を開けてくることを教えよう。
少しずつ少しずつ、出来るようになればいい。
ようし。
息子よ、ぼちぼちがんばるかね
(^^)人(^^)